北風に吠える
増田俊一
早いもので今年もまた冬がやって来た。
また冬の話で申し訳ないのだが、僕は冬の釣りが大好きなのでしょうがない。
とは言え今年は暖かく、魚の動く時期が遅れている。
例年なら川の水温低下と共に、バスが本湖に差し上がって来る頃なのだが、一時ちびっ子が入って来たきりで、パッタリと途絶えてしまった。
江津湖本湖と言えば場所によってはウィードが水面まで繁り、そのポイントも隠され何よりポイントを絞り込めない。
じゃまだ川の何処かに居るはずだ。
その何処かで集まってるはずだ。
晩秋に喰っていた魚らが消えたのを合図に、今年も魚捜しの日々が始まる。
ポツポツと魚は拾えて行くが、纏まった魚の動きが見えない。ようやく見付けた魚もお目当てのビッグとは程遠いサイズであった。
そんなエリアの中で雨の日にビッグサイズをwアンクルで掛けるもバラシ。
とにかく見付けた。
晴れの日も雨の日も朝夕問わず通ってみるも、反応するのは決まって雨。
パターンは掴んだ。
その日は夜明け直前から雨だった。
その後、年末までの予報を見ても雨らしきものはまるでない。
年内、本気で狙えるのはこれが最後のチャンスかもしれない。
何よりあまりに降りすぎると魚が動いてしまう。
友人との馬鹿話もポイントを目の前にすると二人とも口数も自然と減る。
セラフのホッツィートッツィーを流れのストラクチャーにダウン気味にアプローチしてモジモジ誘うと、
ガボン!!
40も半ばの奴であった。
でもこんなんじゃねえ。
続くポイント。
流れを分断するポイントに引き続きホッツィーを着水ポーズからの誘い出しで派手に出た。
合わせると水面で喰って合わせたのにも関わらず、素早く潜ってその姿も見えない。何よりその重量感が凄い。
コイツはデケエ!
叫びながら追って合わせをもう1発鋭く入れた。
水中でイヤイヤする魚を410のテストロッドのバットに乗せ一気にカヌー際まで寄せるが、
今度は一気に流れに乗られバットからブチ曲げられて水中まで持っていかれた所でクラッチを切って難を逃れた。
再び浮かせ寄せて暴れるソイツの下顎を掴んでフィニッシュ。
久しぶりに吠えた。
痺れる冬の53。
長さ、太さ、パワー、それに頭の良さ。絞り込んだ雨の朝にホッツィーで。ハンドランディング。テストロッド。
そして冬。
今までの僕だったら、昼間喰わなかったら夜に行ってでも仕留めていたのだが、最近はどうしても明るい時に仕留めたい。
夜も好きで良くやってたんだけど、やはり折角のトップウォーターなのにバイトも良く見えないのは楽しさも半減である。
勿論夜しか喰わないようなデカイ魚が居るのも知っている。
だけどそれはただ魚を捕るためだけに手段を選ばない気がしてならない。
ただ魚を捕ったという事実と、それに何より写真に説得力がない。
それは僕らが目指したあの格好いいトップウォータープラッガーの姿なのか?
この釣りも色々細分化してきて色々な人が居ても良いと思う。
そう。ただ水面でバスを釣るだけなら方法はいくらでもある。
優れた道具もいくらでも
ある。
武士は喰わねど高楊枝。
じゃないけど、お気に入りのタックルを持ち、格好いい船に乗り、これで釣れなきゃ釣れなくて良い。
その心意気までを含めた所が格好いいのがトップウォータープラッガーの姿なのではなかろうか?
少なくとも僕はそれに憧れトップウォータープラッガーになった。
そして僕は今でもトップウォータープラッガーになりたいと思っている。
そう。あの誇り高きあの人のように。